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途中で諦めたユウを、強引に引っ張ったラウルは、部室に入ると同時に、元気な明るい声で、高らかに挨拶をした。
「先輩、お疲れ様です!」
「お疲れ。おや、珍しい。ユウ坊と一緒に来たのか?」
先に部室に来ていた先輩らは、初めて見る組み合わせに、軽く目を丸くした。
「おい、いい加減放せ!」
不機嫌にラウルの手を振り払うが、振り払われた張本人は、にこやかな笑いを浮かべたままだった。
好機嫌とも伺えるラウルに、ユウは若干不気味に感じながらも、咎めた。
「つか、何の真似だ、てめえ?」
「何の真似と言われましても。今日は打ち上げなんですから、呼ぶのは当たり前じゃないですか!」
「疲れてるんだよ。今日は帰って再放送を視るって決めてるんだよ!」
疲労もあってか、苛立ち気味で語調を強めるユウであったが、ラウルがびしっと人差し指を上向きに突き立てた。
「それでもですね、人間関係は大切なことなんですよ、先輩。先輩は折角良い面をたくさん持ってるんだから、もっともっと表に出さないと勿体ないです」
「・・・な、なんだよ、いきなり・・・・・・」
今まで自分に対して主張もしたこともなかった後輩の論に、ユウは一歩だけ引いた。
眉根を不審に寄せるユウに、ラウルは自身の胸に手を当てながら言った。
「何でしたら、僕がユウ先輩の兄貴代わりとなっても良いんですよ」
「兄貴代わりって、お前俺より年下だろ?」
「すみません・・・・・・僕、実は今年で、三十六になるんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「ですから、僕のことは、“お兄さん”と呼んでもいいんですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラウルの言葉に、ユウの顔に衝撃が走った。
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