付録

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******  色違いの目を持った女の子は、お父さんとお母さんに、会ったことがありませんでした。  とてもふつうじゃない形で、産まれてきたのです。  女の子には、他にたくさんの兄弟がいましたが、とてもそんな風に思えませんでした。  みんな、お父さんだけがちがうのです。  女の子たちを育ててくれたのは、白衣をきた大人達でした。  毎日決まった時間にご飯を食べさせて、決まった時間にテストをして、決まった時間に検診するのです。  それが、女の子の毎日でした。  ある日、女の子は大人達に手を引かれて、外へ出ました。  連れて来られたのは、氷でできた大きなお城でした。そこは、お母さんが住んでいる場所でした。  今日からここで暮らすんだよ。と、女の子は感じていました。  大人達に連れられて、女の子はようやく、お母さんに会うことができました。  お母さんはとても綺麗でした。だけど、氷のように冷たい人でした。 「おかあさま」  女の子は憧れいっぱいに、お母さんを呼びました。だけど、お母さんは無視しました。  女の子は、お城の中にある、冷たい牢屋に閉じ込められました。その日から、そこが女の子の家になりました。  寒くて、冷たくて、女の子は何度も凍え死にそうになりました。お母さんに助けてと求めても、助けてはくれません。あれから、お母さんとは一度も会っていないのです。  冷たい牢屋の中で、女の子は、お父さんを呼ぶようになりました。お母さんが助けてくれないからです。  一度も会ったことのないお父さんを、女の子は、牢屋の中で、何度も何度も呼びました。  女の子は、お父さんに会いたいと、願うようになりました。
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