灰色の町

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 ------最後に悪態をついたのが……何時だったか、とにかく俺は、結構な時間をかけてこの町を探索し、ついに"拠点"と呼べそうなところを見つけていた。 「と言っても、崩れてないガレージなんだけどね」  場所は灰色に染まった商店街、もとい、生まれ故郷でもある東京都某所にある南台商店街。そして、そこに偶然見つけた、ワゴン車用のガレージであった。崩れてなく、雪埃しのげて、そこそこスペースがある。更には、地震の影響で飛び出したのか、本来のここの主であるワゴン車が目の前の道に出ているので、目印にもなる。 「次は食い物と水を探して、その次は……」  やることはたくさんあるが、なぜそこまでして生き残りたいのか……心の奥底に沈んだ"何か"からは、その答えは返ってこない。ただ、時折「探せ、探せ」と、心の中に響いてくる声から察するに、何かを探しているのだろう。 「そりゃそうだろ、探せっつってんだから」  一人で馬鹿みたいなやり取りともいえない何かを繰り広げながら、灰色の町、いや灰色の商店街……やっぱり灰色の町の中へと歩んでいった。……どうせ、ここが銀座だろうが新宿だろうが、灰色の瓦礫の山であることに変わりはないのだから。  雑貨屋の瓦礫をどかして日常用品を、薬局の瓦礫をテコの原理でどかして薬や包帯を、入り口が崩れているのでわきからコンビニに入り保存食を等々、とにかくたくさんの物資を集めてはガレージに運び、その数をチェックしていた。 「ユーパン、276錠、セロクエル、115錠、サイレース……くっそ、12錠か……」  中でも入念に数えた物は、精神薬である。感情をコントロールする精神系の薬は飲まないに越したことは無いのだが、眠り薬は俺にとって無くてはならないものなので数えていたのだが…… 「ジェネリック医薬品含めて、眠れそうな薬は100錠か……」  たった今、俺がこの町で生きていける限界が分かった。100日である。俺は気分を高揚させる薬を数粒口に放り込みながら、この先の生活について考える。正確には飲まずに過ごす日があるかもしれないのでわからないが、少し考えただけで大よその見当はついた。やはり、100日前後である。
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