灰色の町

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「なぜ眠り薬が無くては生きられないかって? 簡単な事さ、体が薬を飲まないと徐々に動かなくなるからだよ」  薬の瓶片手に、先生にでもなったかのように独り言を続ける。精神系の薬を飲んだことが気分を高揚させているのだろう、いつもより心が朗らかだ。 「今だってそうだ、体の関節は常に音を立てて鳴るし、なにかあるごとに節々が固まっていくのを感じている」  でも、薬を飲んでとにかく眠れば、体は動く。体が動けば助かる道……それとも、心の声に従って抗う道と言った方がいいかもしれないが、とにかくそんな道が見えてくるのだ。 「でもまぁ……今日はもう寝ていいだろ?」  誰に問うでもなく、自分に問う。ここ数日間の薬なしの生活、灰色の生活、絶望しかけた生活……そろそろ休んでもいいころだ。 「おやすみ、俺」  袋を寝袋の様に扱い、薬を一錠、水なしで飲みこむ。しばらく飲んでなかったせいか、すぐに眠気は回ってきた。 「せめて、悪夢を見ませんように……」  そう残し、ガレージの中、灰色の雪が降りしきる街中で、一時の安眠についたのだった。  ------「ッハ!」  鉛色の空の上から太陽が消えた時間に目を覚ます。睡眠は効能通り五時間の眠りを俺にくれた。だが、その間の悪夢までは取っ払ってはくれなかったようだ。 「……チクショウ」  いやな悪夢を、見たくもない幻想を長々と見せられて、眠った気はしないが、兎にも角にも睡眠はとれた……本当はもっと、ゆっくり寝ていたかったから、チクショウなどとつぶやいたのだが、とりあえず太陽が昇るのを待つことにした。 「寝ても起きても地獄かよ……」  月があざ笑うかのように真上にある事から、夜明けは数時間先になるだろう。 「あぁー、クソ……」  悪態は夜の闇に消えていった。    
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