灰色の町

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------灰色の商店街での暮らしが始まって、早くも一週間が経過した。その間に他の生存者や何か大きな出来事があったかと言えば、二つある。一つは、花屋にあった花の種を何とか咲かせようとしたが失敗し、心が荒んだこと。そしてもう一つは 「家族が増えました」  次いで、ニャアー、と三つの泣き声が聞こえてくる。見ると、二匹の黒猫と一匹の三毛猫が、ガレージの中でじゃれ合っていた。 「ほら、餌だぞ」  じゃれ合っている三匹に向けてそう言うと、拾ってきた猫缶を開けてやり、中身を小さなお椀にぶちまけてやる。すると、遊んでいたことなど忘れてしまったかのような切り替えの早さで、餌を食べにきた。  猫の名前だが、全身真っ黒なモコモコの猫には"シャノ"と名付け、おなかの毛が星のような形を作っていて、そこ以外全部真っ黒な猫には"ステラ"と名付けた。そして、三匹目の猫は三毛猫なのだが、正直だるくなってきたので、適当に"ミケ"と名付けた。 「仲良くな」  そう言い残し、ガレージを後にする。外では相変わらず雪が灰色になって降っていた。 「……」  ガレージから数歩歩き、空を見上げる。いつもの灰色の街並みや空にある霧が、ここ数日で余計に腹立たしい存在へと変わっていた。 「花畑は無理だったよ、代わりに猫たちの面倒を見たら死んでもいいだろ?」  空に向けて、言う。花を咲かせようとしたが失敗したことは、あまりに語ることが少ないが、あまりに強く心をえぐられた気がした。要は、自分は花の一つも咲かせられないほど惨めな存在、という事が分かったのである。
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