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------かれこれ一時間、俺は彼女が目を覚ますのを待っていた。ただただ茫然と、釈然と、唖然と、とにかく黙ってひたすらに待っていた。
先ほど、彼女を雪花と例えたが、それでもやはり体温はあるようで、寒くならないように布団をかけてやったのが……三十分前だったか、とにかく早く目覚めてほしい。……あっためて目覚めを待つ、まるで卵である。
「ん……」
そんな馬鹿な事を考えていたとき、彼女の長いまつげがピクリと動き、うめき声ともなんとも取れない声が聞こえてきた。
「ここ、は?」
うっすらと開けた瞳からは、青く透き通った色が差し込み、ピンク色の唇からは当然の疑問詞があげられていた。
「おはよう、謎の雪花さん」
青い瞳はまだこちらを捉えていないようだったので、こちらから声をかけてやる。すると、ゆっくりとした動作で、彼女はこちらを見据えてきた。
「おは、よう」
そして、真似するかのようなたどたどしい口調で言葉を紡ぐと、その場にユラリと立ち上がった。
「なんだ、立てるのか」
数瞬、何かされるのではと警戒したが、そういうそぶりはなく、自分の手足を確認しているようだった。
改めて立ち上がった彼女を見てみると、本当に真っ白であり、神々しい。
長く穢れのない白い髪は、枝垂桜の様に体に降り注ぎ、着ている見たこともないワンピースも、どこか神々しい雰囲気を醸し出している。青い瞳を始めとした整った顔立ちも綺麗で、穢れを感じさせない……こんな真っ白で綺麗な彼女と、薄汚れた雑巾のような自分では、天地の差を感じると、心から思った。
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