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「ねぇ、流」
早速の様に名前で呼んでくるあたり、羞恥心とかも薄いのだろうと思った。
「この猫たちの名前、流がつけたの、よね」
つっかえひっかえな問いに対し、相槌で返す。これが、後々考えると間違いだったのかもしれない。
「だったら、私の名前も、つけて」
「あ?」
突然なんだ、どうした、と問う事すら忘れるほど、突拍子もない言葉だった。
「猫たちの名前、素敵。だから、名前忘れた、私にも」
理屈が通ってるような通ってないような、とにかくそんな彼女の問いに対し、俺は胸元のステラが飛び降りるまで返事を出せないでいた。
「あ、ああ……いやいやいやいや、名前はそんな簡単に決まるもんじゃないし、ミケの時点で飽きてたし……それに、あんたが本当の記憶を思い出したとき、気持ち悪いと思うぞ?」
気持ち悪い? と首をかしげる彼女。ああそうだ。俺だったら気味が悪いね。
「つまりだな、この男は私に勝手な名前をつけて遊んでたのね……みたいに感じると、思うぞ」
妙に高い声を出して、演技までしてやったというのに、彼女の答えは『構わない』だった。
前のめりになってこちらに迫ってくる彼女。髪が垂れて俺の体に当たって、何とも言えない感触が体を撫でた。
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