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「はぁ……本当に、これが夢だったらと思うよ」
鉛の様に重たい体を立ち上がらせ、ふらつきながらも、ポケットに入っていた携帯電話を確認する。そこには、最後に見た日付、もとい大地震が最初に起きた日付から、一か月後の曜日と日にちが表示されていた。
「ハッ、どうりで腹が減るわけだ」
鼻を鳴らして天を仰ぐ。こうなると、もはや苦笑いしか出てこない。携帯電話のバッテリーは、日付を表示した直後に切れ、電信柱も倒れているので公衆電話もおそらく使えない。そして、大地震から一か月という日にちが過ぎ去った廃墟の様な町に、誰かがいるとも考えずらい。
「無駄、なんだろうけどね……探してみるか、色々と」
この現実に対し、心が折れなかったのは、自分が抱えている"病気"のせいだろうか。とにかく折れなかった心を引きづって、ふらつく足取りで食べ物や人を探しに行く事にした。
「しっかし……今まで見た悪夢が優しく思えてくるね、この景色見てると」
乾いた笑い声を静かにあげながら、灰色の町をふらふらと進んでいった。
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