灰色の町

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 目覚めた日から数えて、三日後。俺は近くの公園に面した図書館の中で、探し物をしていた。  といっても、この三日間ろくに寝ていないので、散らかった本や倒れた本棚をかき分けていく事すら難しい。だが、この三日間を眠って過ごし、目的を持って図書館で探し物をするような"健常者"は、そういないだろう。"普通"ならば、孤独に耐えきれずに自殺なり自暴自棄になるなりして、何もせずに終わっていくだろう。 「少なくとも俺はそう思う」  独り言である。俺は独り言が好きなのである。そういう一種の"病気"の"症状"みたいなものなのである。 「うつ病、不眠症、PTSDの可能性、極めつけはサイコパスの危険性あり」  地震が起きる前の日常、里親の家から通っていた病院の先生から言われてきた言葉を並べてみる。そう、俺は精神に異常をきたした、いわゆる"異常者"なのである。まぁ、健常者に対して思いついた言葉がそれしかなかったわけだが、とにかく俺の心は複雑怪奇になっており、自分でも何をしでかすかわからないのである。 「この前だってそうだ、普通ならこんな現実を前にしたら放心してるだろうよ」  この前とは、三日前目覚めたときのことである。あの時冷静に物事を考えられたことが幸いなのか災いなのかは置いとくとして、今は作業に集中した。  精神系の薬を飲んでないせいで震える手をなんとか動かし、本をどける。ズキズキと痛む頭を抱えながら目当ての物がないか探す。睡眠不足で疲れ切った体に鞭打って次の所を探す。
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