灰色の町

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「まぁ、放心してそのまま死んだほうが、あるいはよかったのかもしれないがね」  自分のボロボロの体を思えば、そっちのほうが遥かに楽だろう。しかし、医者でもわからなかった俺の心の底からは、この現実に対して、"抗え"と、奥底から響かせてくるのだ。俺にとって、絶対の行動の指針と言えば、この心の声なので、従ってはいるが……。 「はぁ……しんどい」  崩れかかった図書館の中で、崩れかかった自分の体を動かし、必死に探す物……それは、図書館ならばどこにでもあるような新聞だった。  なぜ、新聞を探すのかというと、実際日本で何が起きていたのか、詳しく知らないからだ。それは、あの地震に始まる何らかの災害の時、俺はちょうど精神薬を切らしていて、動くことすらままならなかった。だが地震で外に放り出され、死んだように地面を数日間這いずり回っていたとき、誰かに頭を踏まれて意識を失ってしまった。  そして、三日前目覚めた。流石に体は薬なしの時間に慣れたのか、また這いずり回ることは無かった。考えてみれば一か月近く飲まず食わずでぶっ倒れていたはずなのだから、人間なんやかんやでしぶといものである。 「お、あった」  そしてようやく、目当ての新聞の束が見つかった。 「日付は二か月前からのがあるな、なになに……」  
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