灰色の町

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------空を見上げれば、謎の霧とその向こうに少し見える鉛色の空。前を向けば廃墟と化した街並み。そして目線を落とせば新聞が地面の上に散らばっている。 「……」  新聞の束を外の開けた公園に持ってきて、日付順に並べたのは一時間ほど前の事だ。そして、二か月前からの記事を飛ばし飛ばし読んでいって分かったことは、いくつかある。とりあえず、どっかの新聞会社は、日本が"終わる"まで新聞の発行を続けていたことと、この図書館も律儀に保管していたこと。 「そして、俺一人じゃどうしようもない現実が分かったってこと!」  一気に言い切ると、その場にぶっ倒れて謎の霧が掛かる空を見上げる。同時に積もっていた灰色の雪が宙に舞った。  知ったことを簡単にまとめると、とにかく日本は歴史的大災害に見舞われ、謎の霧が空にかかって、外国とも通信が取れなくなって、謎の奇病が発病したという事。  奇病が発病した辺りの記事で、新聞に変換ミス等が出てきたことから、どうやら編集者がその謎の奇病とやらに発病でもしたのだろう。もしくはこの現実に気が狂ったのだろうか。とにかく、それ以降の記事は見当たらない。しかし、こんな現実を、十八歳の自分にどうしろというのだろうか。いや、どうにかしなければならないのか? 「なぁ、なんで俺は生き残っちまったんだよ」  いっそ瓦礫にでも潰されて死んじまったほうが楽だったろう。震える手を空に伸ばして、誰に問うでもなく問いかける。空からは変わらず灰色の雪が降っており、当然雪は何も答えてくれない。
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