灰色の町

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 灰色の雪に染まった道の中を、大きな袋を引きずって歩くと、まるで大蛇がそこにいたかのような跡ができる。そして、そんな跡は、こんな町の中で迷わないようにするための指針になる。 「疲れた……というか、本当に灰色ばっかりだな……」  当てもなくこんな街中を歩いてきたわけではないのだが、半端当てもないようなものだったので、疲れてしまうし、灰色の景色になかなかなれずに気が滅入ってしまう。仕方なく引きずってきた袋の上に座り込み、小休止を取ることにするが、休むと言っても食い物も何もない。 「あぁー、疲れた。本当に疲れた」   馬鹿でかいため息とともに愚痴をこぼし、体を覆っても余りある袋の上に寝転がる。  実際、俺は特別に"この町で孤独に生きていくんだ"とか"俺が絶対生存者を見つけてやる! "とかを決心しているわけではない。なので、とある目的の為に瓦礫から引っ張り出してきた袋を引きずっての物資調達、兼町の様子を伺うという行動に対し、俺はそこまで本気になれないのだ。 「せめて雪じゃなくて花の種が降ってくりゃあな……」  朝早起きな朝顔、聖地に咲くというタチアオイ、オレンジの宝石のような実を付けるフユサンゴ……視界いっぱいに広がる光景を瞼の裏側に映し、しっかり見ようとして、ぎゅっと目を閉じると、頭痛で視界が開けた。 「また、この風景かよ」  妄想の中だけでも花園を見ていたかったのに、不眠症から来る頭痛で灰色の世界に戻されるとは、なんとも癪な話である。 「クソッタレ……」  珍しく純粋な感情が沸いたかと思って口に出したら、ただの悪態であった。 「仕方ない、行くか」  節々をパキパキと鳴らしながら立ち上がり、袋を持って再び歩み始めた。
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