第10話

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「だけどお兄様は来なかった」 鼻をすするような音がして 僕は慌てて立ち上がった。 「だけど、君はこうして――ちゃんと生きてるじゃないか」 ベッドの足もとギリギリまで詰め寄り ヴェールに手をかける。 「やめて!私はあの時、屋上から飛び降りて死んだの。今ここにいるのは、ベッドから動く事も出来ない――ただの影」 「マリア……?」 ヴェールを開く事は出来なかった。 「タダノ カゲ ナンダヨ」 澄み切った少女の声音が 突然――。 野太い悪魔の声に豹変したからだ。
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