友達

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「あの、何読んでるの?」 「・・・"秘密基地"っていう本。佐川弘樹の。」 「それ、読んだことあるよ!!わたし、あんまり読まないんだけど、その本なら読んだことあるの!」 まひろはびっくりしながら奏を見た。 「・・・!!ぼくのこと、無視しないの・・・?」 「え?何で?だって、ちゃんと声が聞こえるんだもん。無視も何も、ないよ。」 まひろはまだ目を大きく見開いたままだ。 (ぼっぼくのこと無視しない人なんて、家族と信だけだった。ただのクラスメイトがぼくを無 視しないなんて 、初めてだ。・・・ん?何だろう。心の中がすっぽりと埋められていくような感覚は・・・) 「霜北さん?・・・どっどうしたの!?あ・・・ごめん!話しかけなかった方が・・・」 「・・・(首を横に振る)違うの・・・話しかけてくれたことが、嬉しいの・・・」 まひろの目からは大粒の涙。次々と落ちてきて、小さな手では受け止めきれなかった。 止めようとしても、止められない。押さえても長年出てこなかった涙は、すぐには止められない。 何年か分の涙が、一気に流れ出したのだ。 「そんなに泣かなくても・・・。うーんと・・・はい。ハンカチ。」 「!!あ・・・ありがとう・・・」 ハンカチを貸してもらったことで、まひろはもっと泣いてしまった。まひろの手には大きすぎ るハンカチ。 そのハンカチがビショビショになっても、涙は止まらなかった。 奏はまひろの苦しさが少しずつ伝わってきた。 小さな声のせいで、無視され続けた苦しさ。影で悪口を言われる苦しさ。 たとえ表に出していなかったとしても、心の中で悲鳴をあげてた。 その苦しさを全て流して欲しかった。それで心が軽くなるなら、流して欲しかった。 「・・・何、やってんだ?」 奏の後ろで、男の子の声がした。
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