2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、何読んでるの?」
「・・・"秘密基地"っていう本。佐川弘樹の。」
「それ、読んだことあるよ!!わたし、あんまり読まないんだけど、その本なら読んだことあるの!」
まひろはびっくりしながら奏を見た。
「・・・!!ぼくのこと、無視しないの・・・?」
「え?何で?だって、ちゃんと声が聞こえるんだもん。無視も何も、ないよ。」
まひろはまだ目を大きく見開いたままだ。
(ぼっぼくのこと無視しない人なんて、家族と信だけだった。ただのクラスメイトがぼくを無 視しないなんて 、初めてだ。・・・ん?何だろう。心の中がすっぽりと埋められていくような感覚は・・・)
「霜北さん?・・・どっどうしたの!?あ・・・ごめん!話しかけなかった方が・・・」
「・・・(首を横に振る)違うの・・・話しかけてくれたことが、嬉しいの・・・」
まひろの目からは大粒の涙。次々と落ちてきて、小さな手では受け止めきれなかった。
止めようとしても、止められない。押さえても長年出てこなかった涙は、すぐには止められない。
何年か分の涙が、一気に流れ出したのだ。
「そんなに泣かなくても・・・。うーんと・・・はい。ハンカチ。」
「!!あ・・・ありがとう・・・」
ハンカチを貸してもらったことで、まひろはもっと泣いてしまった。まひろの手には大きすぎ
るハンカチ。
そのハンカチがビショビショになっても、涙は止まらなかった。
奏はまひろの苦しさが少しずつ伝わってきた。
小さな声のせいで、無視され続けた苦しさ。影で悪口を言われる苦しさ。
たとえ表に出していなかったとしても、心の中で悲鳴をあげてた。
その苦しさを全て流して欲しかった。それで心が軽くなるなら、流して欲しかった。
「・・・何、やってんだ?」
奏の後ろで、男の子の声がした。
最初のコメントを投稿しよう!