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真夏の頂点
これを目指して、どれだけの高校生が汗を流し・・・喜び悲しんだことだろうか。
俺、早崎祐斗は頂点を見ながらたどり着けなかった人間だ。
今でも忘れやしない。あの日、9回裏2死1塁。俺たち恋恋高校が後1人を抑えられれば全国優勝がかかってた場面。なんてことはない・・・普通の場面。
レフトの俺に与えられた使命、何としてでもボールを掴む。ただそれだけ。
あおいが投げる。カウント3-1、サブマリン投法から鮮やかに投げられた球・・・友沢は弾き返すようにそれを打った。打球は・・・俺のもとへ。
俺には見えた。相手ナインと相手応援団が絶望に満ちた顔をしたのが。
俺には見えた。味方ナインと味方応援団が歓喜に満ちた顔をしたのが。
利き手ではない左手を高く掲げる。俺はコルク色のグラブを構えた。
白球があおいのシンカーに負けて落ちてきた。胸が締め付けられた。
ああ、こんなものなのか。満足と共に何故か空虚な想いが俺を襲った。
あと数cm・・・瞬間、周りが白いスローモーションになった。
捕るんだ。俺は・・・頂点に立つんだ。あおい・矢部・はるかちゃん・みんなと一緒に。
球は
風に流され
地面を跳ねた。
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