悪食

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そら手伝うやろ。 ちっちゃい体で重たい荷物持って走り回って、それが全部俺達の為なんやで? 女の子の華奢な薄い手がボロボロになっとって。 同じ年代の女優さん達はキレイにネイルしたり着飾っとんのに、それはもちろん見られる立場とそれをサポートする立場という職の違いで当然やけど。 汗で化粧も落ちて、髪振り乱して俺らの為に。 俺の視線に気付いてそっと指を隠して、お手入れしてなくて、と恥ずかしそうに俯いた彼女がちょっといじらしくて、思わずその手を取った。 「働く子の手や。俺好きやわ。」 その時タイミング悪く角を曲がって現れた恋人にその姿を見られた。 やましい事は何もないけど、完全に誤解を招く状況。 至近距離で女の子の手とって「好きやわ」なんて。 逆の立場やったら間違いなくその場で連れ去って責め立てるやろ。 一瞬愛しい子の目が大きく見開かれて、でもすぐにいつもの笑顔。 「わー荷物いっぱいやん! 手伝おか。」
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