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軽快な電子ミシンの音が、広い部屋に響き渡っている。
放課後の家庭科室の一角で、私と佐伯さんは黙々と作業を続けていた。
文化祭の準備でもっと混み合っているかと思ったけれど、今日はまだ時間が早いのか、部屋を使っているのは私たちだけだった。
他のお化けメンバーは、倉庫に木材や段ボールの調達に出かけている。
「……あっ」
ガガガ、という大きな音を立て、私の使っていたミシンが停止する。
「あーあ。下糸、また絡まったあ。――んもーっ」
「ミシンが歪んでるのかも。替えてみたら?」
「そうだね」
私は上糸をシュルシュルと外した。
糸切りバサミを取り出し、絡まってモジャモジャになった下糸を切っていると、
「ミシンて、当たり外れ、あるよね」
作業を続けながら、佐伯さんが言った。
うん、と頷きながら佐伯さんの順調な手元を見る。
彼女は今まで、何かで外れを引いた事なんて、あるのだろうか。
「ねえ、奈良崎さん」
「なあに?」
あまりの絡まり具合にイライラしながら下糸をチョキチョキしていると、
「彩加ちゃん、て呼んでも、いい?」
「……」
思わずドキッとして顔を上げる。
佐伯さんは少し恥ずかしそうな顔をして、ちら、とこちらを見た。
――か。
かわいいっ!!
これ……もし告白されたりしたら迷わず惚れるよ?私。
なんだか急に、二人きりで家庭科室にいる事を意識したりして。
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