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「……何、後輩泣かせてんの?」
ひょい、と打ち合わせスペースに入ってきたのは長瀬だった。
私が泣かせたわけじゃない、と反論したいところだけれど、じゃあ誰のせいだと言われれば、この場には私しかいない。
長瀬の発言は、この状況を見れば、当然のことだと思った。
「……や、あの。ちょっと、ね……」
しどろもどろになりながら、言葉を濁した。
詳しい事情を話せば、ユリナちゃんのプライベートを明かすことになってしまう。
どう説明したものかと頭を悩ませて、弱り切っていた私の耳に飛び込んだのは、当事者、ユリナちゃんの声だった。
「な、長瀬さんも、そう、思いますかっ!?」
「は?」
「えっ?」
うるうると瞳を潤ませたユリナちゃんは、さっき私に見せた顔を、長瀬に向けている。
事情を知らない長瀬は当然、疑問符を浮かべていた。
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