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「どうして?」
「だ、だって修平ですよぉ!? そ、そんなのありえないじゃないですかぁっ!」
「でも羽村がそう思うってことは、ありえないとは言い切れないと思わない?」
「でっ、でもっ!」
「宮野」
長瀬が一段低い声で、ユリナちゃんの名前を呼んだ。
彼女の肩が一瞬、びくりと震える。
「一旦、落ち着いて考えてみようか。ありえないって言って目を背けても、何も解決しないよ?」
「そ、それは……そう、ですけどぉ……」
「ん、よし。じゃあ、ひとつひとつ、整理していこう」
にっこり笑った長瀬は、たいした役者だと思う。
動揺し切っていたユリナちゃんを、私と二人の時には見せない柔らかい話し方と、人好きのするやさしい笑顔で、見事に自分のペースへと誘導した。
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