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「……私には、手に負えない、わ」
うーん、と大きく伸びをして、呟いた。
独り言にも満たない、何気ない言葉のつもりだった。
が。
「……何がだよ?」
思っていたより大きな声が出ていたらしい。
隣に戻ってきた長瀬が不思議そうな顔で私を見ていた。
「ん? ……あー、うん、まあ、こっちのこと」
「ふーん?」
首を傾げてはいるが、そう気になってはいないようだ。
長瀬はそのまま自分の席で椅子を引き、ゆったりと腰掛けた。
「上手くいったんだってな、あいつら」
「あー、うん。ユリナちゃんがお礼言ってたよ、長瀬と私のおかげだ、って」
「大げさだな。放っといてもいずれそうなっただろーに」
「だよね」
あはは、と笑うと長瀬も軽く微笑み返してきた。
呆れたような笑顔だけど、後輩への思いやりを感じられて悪い気はしなかった。
でもホント、幸せそうだったなぁ。
心の中で呟くと、高井くんのことを話す、ユリナちゃんの笑顔を思い出した。
自然とその思いが、口から溢れる。
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