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「……でも、良かったよね。気持ち、通じ合って」
「そーだな」
「うん、良かった」
深く頷いている私を、長瀬が不思議そうに見ている。
「しみじみ言うな。どうしたんだよ?」
「うーん……どう言ったらいいかわかんない」
「何だよそれ」
ますます深くなる、眉間のシワ。
ちょっと細めた目が、いつも愛想のいい表面上の長瀬ではないことを物語る。
私は心にぽつんと浮かんだ気持ちを、何とか言葉で表そうと試みた。
「んー……そーね、ちょっと意味違うけど、羨ましい」
「はあ?」
まあ、そういう反応になるわよね。
納得のリアクションにもめげず、私は言葉を続ける。
「ユリナちゃんも高井くんも、すごいなーって」
「何が」
長瀬の方に向いていた視線を自分の正面へと戻し、私はまた伸びをした。
大きく空気を吐き出すと、何となく、少しだけスッキリした気分になれる。
手を上に上げたまま、長瀬の質問に答えた。
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