1#ティタン

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視界の端に小人が映る。その小人は大切そうに、一粒の飴玉を抱えている。小さな体には重そうな、四日続いた雨のせいで汚れちゃった川みたいな色をした飴玉。あまり綺麗じゃない緑色。それで、小人はゆっくり近づいてきて、言うんだ。 「この飴玉はね、宝物なんだ。僕達小人の夢がいっぱい、ぎゅうううって詰まってる。世界で一番の宝物さ。」 でも、小人の言葉なんて僕達人間は誰も知らないから、小人のいってることなんて解らないし、第一、声が小さすぎて聞こえない。 ―ほとんどはね。 たまにいるんだ。聞こえないはずの声が聞こえちゃう。だから、小人がそんなに讃える宝物って、いったいどんな味がするんだろうって、気になって仕方がなくなっちゃう。もうね、手を伸ばさずにはいられなくなっちゃうんだ。“ああ、食べたい。どうしても食べたい。”ってね。 「そんなにじっとり、粘着質がすぎて惹かれあっちゃうおばさん同士みたいに見つめたって、宝物はあげないよ。」
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