3人が本棚に入れています
本棚に追加
あの小人はすっかり姿がみえなくなっちゃったけど、それからどれくらいかな。数年、数十年、いや、僕達人間とは速度の違う時間をきっと過ごしたんだね。じゃないと夢の国って感じがしないしね。それで、気付くんだ。小人の世界にとって大きな問題が生まれてしまったって。それは、食料不足。
誰のせいかはわかってる。この世界にいつだかやって来た、たった一人の人間のせいさ。奴はたまに、本当にたまに、誰にも内緒で小人を食べてた。食料不足がひどくなる一方で、小人の数もどんどん減った。どんどん、どんどん。
もう小人はいなくなっちゃって、見あたらなくなって、奴はわんわん泣くんだ。ひとりぼっちになっちゃったって。自分のせいなんだけど、それでもね。悲しかった。
奴、あまりにもわんわん泣くから、なんだか歯がぐらぐらしてきた。ちょっと気になったけど、悲しい気持ちの方が強くって。泣き続けた。そしたら、ポロ。ポロッ。あ、抜けた。でもよくみたら歯じゃなかったんだ。それは、飴玉だった。そう、まさに、四日続いた雨のせいで汚れちゃった川みたいな色をした、あの飴玉さ。
「君。ありがとう。これでまた、僕達小人の夢が叶うかもしれない。」
あの小人だった。小人の世界に来たとたん姿を消したあの小人。なんだかよくわからない言葉を残して、あの飴玉を重そうに抱えて、今度こそ走って消えちゃった。
最初のコメントを投稿しよう!