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しばらくするとお店のドアが開き、常連さんらしき人が入ってきた。
大将は「いらっしゃい!」と声をかけて、そちらへと行ってしまった。
美味しいお酒と肴を楽しみ、満ち足りた気分でいる私に、神谷さんが少し声のトーンを落として話しかけてきた。
「……羽村さんはさ、今週末とか、何してるの?」
「えっ?」
「予定とか……あるのかな、って」
少し緊張を帯びた声。
それに気づきながらも、私は平静を装って答える。
「今週……は、日曜にちょっと、友達と買い物でも行こうかって話をしてます、けど……?」
「じゃあ、土曜日は?」
「今のところ、何も……」
伺うような視線に耐えきれず、私は日本酒の入ったグラスを手にする。
こくり、一口喉に流すと、神谷さんが意を決したように言った。
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