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黙り込んだ私に、長瀬は何かを差し出してきた。
そっと視線を移すと、夜空に煌めく無数の星が細長い紙に踊っている。
どうやら、プラネタリウムのチケットのようだ。
「なんか、スゲーらしいぞこのプラネタリウム。一緒に行かねーか?」
「……どしたの、そのチケット」
「ん? ああ、取引先でもらった。担当者が関わってるみたいでさ」
「ふうん……、いいね。プラネタリウムなんて、何年ぶりだろ」
長瀬の手からチケットを一枚抜き取って、眺める。
本当なら空にはこんな星空が広がっているなんて、嘘みたいだ。
私が魅入られたように手元に視線を落とすのを見て、長瀬は「なくすなよ」と笑った。
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