【第15話】憧れと現実と、その矛盾

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  休日ということもあり、家族連れやカップルも多く、少し混雑していた。 「混んでるね、さすがに」 「そうですね……っわ!」 返事をした私の足元を、走り回る子どもがすり抜けていく。 驚いて足を止めると、「すみません!」と謝る母親がそれを追いかけていった。 会釈を返し、神谷さんと目を見合わせる。 「元気な子ですね」 「そうだね。嬉しくて仕方ないのかもしれないな」 「ああ、そうかも」 自分の小さい頃を思い出し、少し微笑ましく思う。 家族でお出かけ、が、一番の楽しみだった頃。 「僕も、あんなだったよ。ずっと走り回ってた」 「そうなんですか?」 「兄弟みんなそうだったと思うな。今思えば、母さんは大変だったろうね」 くすくす笑う神谷さんにつられて、笑みがこぼれる。 昔の話を聞くと、また少し近づけたような気がするのはどうしてだろう。 私の知らない神谷さんが、まだまだたくさんいるんだろうな。 .
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