【第15話】憧れと現実と、その矛盾

5/40
前へ
/40ページ
次へ
  ふと時計をみると、まだ約束の五分前だった。 私の視線に気づいた神谷さんが、苦笑して言う。 「待ちきれなくて、早めに家を出たんだよ」 「えっ、そうなんですか?」 「うん。……あまりに早過ぎたから、ちょっと時間潰してたくらい」 自分の行動に笑う彼は、何だか幼く見える。 「まるで、遠足前日の子どもみたいだよね」 「いえ……」 そんなこと、ありません。 待ちきれないなんて、私にはもったいない、です。 そんな言葉を飲み込んで、私は首を振った。 明るい光の中、運転している神谷さんは、仕事や飲みの場とはまた違って見える。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2276人が本棚に入れています
本棚に追加