第1話 始まりの不安

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この心臓の鼓動は、生きてる証拠。中絶するっていうことは、殺しちゃうってことでしょ? そんなこと、できるわけないじゃん…。 「はい、それじゃあ今日は終わりです」 「ありがとうございました」 私達は会計を済ませて病院を出た。初診料を含めても、そんなにはしなかった。 とりあえずそれは一安心。 「どうしよう…」 私は彼の車の中にでポツリと呟いた。 「やっぱり…産んで欲しい」 彼は苦しそうに言った。それがどれだけ私に負担をかけることか分かっていたから。 「あんなの聞いたら…諦められないよ…」 私も彼と思いは一緒だった。 「反対されても…産みたい」 私は強い思いで言った。 「まあ、どっちにしても、話はしないといけないと思うから、今日は一緒に行くね」 彼は今までも、何度も私の家に来てるし、ご飯も一緒に食べたりしてる。 けど、こんな改まった感じは、最初に来た時以来だ。 「大丈夫だよ」 彼は優しく私の頭を撫でてくれた。 そしてその夜…
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