第1話 始まりの不安

11/13
前へ
/13ページ
次へ
「あの、ちょっとお話があるんですけど…」 中々言い出せない私に代わって、彼が口火を切った。 「実は今日、病院に行って来て、産婦人科に行って来ました」 「え…」 お母さんは固まった。お父さんは何も言わない。 「それで、9週と2日って言われましまた」 「…うん…そうじゃないかと思ってたよ…」 お父さんがタバコに火を点けながら言った。 「ずっと具合悪いって言ってたもんね…」 お母さんは優しく言った。 「どうしようか…そしたら、早めに籍入れるか」 「え」 突然の提案に、私は戸惑った。 「結香の前にも、もう一人いるはずだったんだよね…その子がダメになったとき、凄く哀しかったからさ…上手く行くか分かんないけど、できるだけ頑張ってあげなよ」 お母さんのその言葉を聞いた瞬間、涙が溢れた。 「でも、安定期に入るまでは、ここにいた方が良いと思うんですよね」 「まあ、そうだな」 彼の言葉に、お父さんが同意した。 「年明け位?年末年始のバタバタが落ち着いたらな」 二人は暖かくこの命を受け入れてくれた。 良かった…。一番の不安材料がなくなった私は、自分の中の鼓動に愛しさを感じていた。 もう私、一人じゃないんだ…。今まで以上に自分の体を労らないと。 バイト先の店長にも話して、辞める時期も決めないとだし、結婚式の写真も取らないと。 やることいっぱいだな…。 でもやっぱり親だな…。何も話してないのに、ちゃんと知ってた。 私が悩んで、苦しんでいたのも。やっぱりすごいよ…。 私もそんなママになりたいな…。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加