第1話 始まりの不安

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2日後、店長と話し合って、辞める時期を決めた。 とりあえず、11月は決まっているところが多いから入るけど、12月は休み。 お正月の忙しい時期だけ手伝って終わりということになった。 どうしても人がいなかったら入るかもしれないけど、なるべく休みにはなると思うし、入っても短い時間だと思う。 私はお腹が空くと気持ち悪くなる、いわゆる食べづわり。 長い時間仕事をしてると、空腹が辛い。 朝起きた時なんかも、すぐに朝食を食べないと、動けなくなってしまう。 今日も仕事だけど…そろそろお腹が…。 「お腹空いてきた…」 何か食べないと、気持ち悪くなる。 「でもあと30分だ…」 あと30分で仕事は終わり。ご飯食べて帰ろう。 しかし平日の21時ともなると、お客さんなんかあまり来ないから暇だ。 「店長、暇」 「掃除でもしてなさい」 キッチンへの通路越しに話し掛けると、笑いながら言われた。 「お腹空いた」 「はいはい、上がるまでに作っておくから、仕事してなさい」 「はーい」 私は台布巾を片手に、店内を掃除して回った。 だいたい一周すれば、30分なんてあっという間。 「城内、終わりー」 「はーい」 店長に声を掛けられて、タイムカードを切った。 「いつものご飯はできてますんで、どうぞ」 「わーい、ありがとうございます」 私はこの店に1年以上勤めていて、ご飯をお願いする時は同じものだったから、店長はすっかり覚えていた。 「じゃあ、お先に失礼します」 「はい、お疲れ様」 私はご飯を持って、控え室に戻った。 「お疲れ様でーす」 私が控え室に戻ると、先に上がっていた人がいた。 「お疲れ様」 私は椅子に座りながら言った。 「城内さん、辞めるって本当すか?」 「本当」 年は一つ下だけど、ここに入ったのは先な男の子が言った。 「妊娠2カ月半って聞いたんですけど… 来年、自分が親になってるとか考えられない…」 「私も思ってなかったよ」 人生、どうなるか分からないものだ。 今の彼と付き合うまでは、結婚したいと思ったこともなかった。 むしろ、彼氏とかも考えたことがなかった。 「なんか他人事っすね」 「いやー、2カ月半じゃ実感が…」 そう言うと、私達は笑い合った。 「ご馳走さま」 私は食事を終えると、更衣室で私服に着替え、お膳を持った。 「じゃあ、お先にね」 「お疲れ様でーす」 私はお膳をキッチンに返すと、店を出た。
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