第1話 始まりの不安

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翌日 ガチャガチャ ドアの鍵が閉まる音がした。私はそっと起きて、トイレに行った。 要領は尿検査と一緒だ。1分で結果が分かる。 でも私は、陽性が出るとなぜか知っていた。 自分の体は、自分が一番よく知っている。 覚悟を決めて窓を見ると、やはり陽性だった。 携帯のカメラで写真に納めると、検査薬をゴミ箱の奥に捨てた。 どうしよう…。昨日、来月くらいから一緒に住み始めたいと話したら、父は反対していた。 まだもう少ししてからと言われた。私は自分の中に命があることを思うと不安で、なるべく彼の傍にいたかった。 早く籍も入れて、その時に備えたかった。 でも、一緒に住む事さえ早いからと反対されてるのに、その上子どもなんて…。 許してもらえるはずが無い。何も考えなくて良いなら、産んであげたい。 せっかくの命なのに…自分の勝手な都合で拒絶しちゃうなんてできない。 望んでも恵まれない人だっているのに。 生理周期だって5年位安定しなかった。安定しても40日で、結構長い。 初潮も高校生になってからで遅かったし、正直、できにくい体だと思う。 簡単に次があるなんて思えない。 でも、私自身がまだ子どもで、親になる自信なんて無い。 どうして良いか分かんない…。 私はそんな不安もあってか、ますます体調は悪くなる一方だし、バイト中もミスが続いて、さらに心配をかけていた。 そうだ、メール。 私はバイト帰りの電車の中で、彼にメールをした。 バイト終わって、今から帰るとこ。今朝の検査結果は陽性だったよ。 今朝の写真を添付して送信した。すると、すぐに返信が来た。 陽性?陽性ってどっち? いまいち伝わらなかったみたいだ。 できてるの。どうしたら良いか分かんないよ…。凄く、不安。 すると、またすぐに返信が来た。 分かった。じゃあ来週、一緒に病院に行こう。 あまり産婦人科って行きたく無いんだけど…こればっかりは仕方ない。 しっかり病院で確定してもらって、どうするかを決めないと。 私はまだ不安の続く日々を送るのだった。
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