江戸編

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むか~しむかし、 今から千年前の真夏の午後、 江戸と言う地名が出来たばかりの頃・・・・・ 徳川家康や太田道顴(おおた・どうかん)が開拓するよりも遥か前、 平安時代末期である長和二年(西暦1013年)の江戸は、 武蔵国と下総国の国境にある隅田川の西口に位置し、 日比谷入り江と呼ばれる入り江が広がり、 皇居辺りまで海だったそうな。 都はおろか江戸城さえ無い当時の漁村には、 浦島太郎と言う貧しい若者がおりました。 浦島太郎は小さな舟に乗って魚を釣り、 それを売って生活する漁師でございます。 「はぁ今日も鰯しか釣れなんだ・・・・ 魚屋め安く買い叩いといて全部は買わねえとはな。 この暑さじゃあ腐っちまうから早く帰ってオラが喰うか」 鰯が余った事と暑さで流れる汗に、 潮風が纏わり付く不快感で、 げんなりしながら海岸沿いを歩いて家に帰る途中、 浦島太郎の耳に子供達の叫び声が聞こえた。 「このバ亀~!」 「なんて事しやがるんだ!」 「鈍亀~!」 「出歯亀~!」 「田亀源五郎~!」 なんと子供達が亀をよってたかって、 いじめているではありませんか。 これを見た浦島太郎は駆け寄って思わず叱責しました。 「こらお前ら!玄武様をいじめるでねえ!」
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