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「わあ…ものすごい人数だね。さっきより増えてる」
振り返ると、田辺もこちらに向かって歩いて来た。
「みんな、暇だなあ」
「はは、そうだね」
側にある机にピョコンと腰掛け、足をぷらぷらさせながら、私はちらりと田辺の横顔を盗み見た。
……何か、言ってよ。
田辺がこちらを振り返りそうになったので、私は慌てて目線を外した。
「お前その顔、……泣いたの?」
田辺は、心配そうに言った。
「もしかして、告白キャンセルされた?」
「……なっ!違うよっ!」
私は口をとがらせて、
「私から断ったの」
「……そっか」
田辺は視線を窓の外に戻した。
しばらく間があってから、
「ちょっと待った。――あんた、信じてないでしょ」
「いや、信じてるよ。気にすんなよ奈良崎、元気出せ」
「信じてないぢゃん!!――ほんとだよ、私の方から、ちゃんと断ったんだから!」
「わかったわかった、そういうこともあるだろ、お前は全然悪くない」
「……違うってばっ!!」
私は立ち上がって、
「断ったのは、あんたのせいなんだからっ」
言い放ってから慌てて口を押さえる。
――思わず、いきなり核心を口にしてしまった。
田辺の方をうかがうと、――その目が、静かにこちらに向けられていた。
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