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私と田辺は窓際に並んで立ち、校庭を見下ろしていた。
「あ」
「おっ」
先生の手にした松明から、櫓に炎が乗り移った。
たき木に油をしみこませ過ぎたのか、思ったより大きな火が上がり、点火した先生が驚いて飛び退くのが見えた。
校庭から、大きなどよめきと歓声が上がる。
櫓の炎は、2階の教室からでも熱気を感じるほど激しく燃え上がっていた。
ロマンチックと言うよりはドラマチックな雰囲気を纏い、オレンジ色の光を揺らしている。
「なんか、きれい」
「おお、すげーな」
言葉少なに、しばし炎を見つめる。
いつの間にかスピーカーからは、静かなラブソングが流れていた。
「お前さ」
田辺は、視線をそのままに、口を開いた。
「このジンクス、信じてんの?」
「……」
私はちょっと考えて、
「本当は信じてない、かな。……だって、毎年違う相手と手つないでる人もいるじゃん?」
ヒロシには内緒だけど、トモコも確か、去年は違う人と一緒に消えて行った。
「でも……」
私は、窓枠に寄りかかって、田辺の横顔を見上げた。
「ジンクスには関係なく、田辺とは……これからもずーっと、一緒にいる様な気がする、かな」
私の言葉に、田辺が振り返った。
「あ。嬉しいんだ?」
私がいたずらっぽく笑うと、田辺は少し顔を紅くして、
「俺も今、おんなじこと、言おうとしたからさ」
そう言って、私をぐい、と引き寄せ、抱きしめた。
ゆっくりと、田辺の大きな背中に手を回す。
力強いのに、――抱きしめられるとふんわり優しくて、あったかくて……。
それでいて、胸がきゅっと切ない、田辺の腕の中。
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