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 もしかしたら……。  私は田辺の腕の中で考えていた。  これって、田辺の作戦だったのかもしれない。  「灯台もと暗し作戦」で『青髭』さんの想いを叶えてあげたように。  自分の想いを叶える為の、田辺の作戦の全貌は、きっと……。  放送ジャックという武器を使った、まっすぐな告白。  暗闇でパニックになった私を抱きしめた、優しい腕。  並んで食べた、美味しいラーメン。  あの、晴れた朝の……強引で優しい、突然のキス。  ――ううん、もしかしたら。  そのずっとずーっと、ずーっと前から、作戦は実行に移されていたのかも。  本当は……田辺は、消しゴムを忘れたことなんて、一度もなかったのかもしれない。 「……ずるいな、田辺……」  私の小さな囁きに、田辺が耳を寄せる。 「なんか言った?」 「……何でもない」  いいよ。  私は、くす、と笑った。  しょうがないから、『隣の田辺くん作戦』に……大人しく引っかかってあげる。  顔を上げると、田辺が不思議そうな顔で私を見下ろしていた。  そっと目を閉じると、すこしの間があって……。  やがて、田辺の優しいキスが降りてきた。  
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