487人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
もしかしたら……。
私は田辺の腕の中で考えていた。
これって、田辺の作戦だったのかもしれない。
「灯台もと暗し作戦」で『青髭』さんの想いを叶えてあげたように。
自分の想いを叶える為の、田辺の作戦の全貌は、きっと……。
放送ジャックという武器を使った、まっすぐな告白。
暗闇でパニックになった私を抱きしめた、優しい腕。
並んで食べた、美味しいラーメン。
あの、晴れた朝の……強引で優しい、突然のキス。
――ううん、もしかしたら。
そのずっとずーっと、ずーっと前から、作戦は実行に移されていたのかも。
本当は……田辺は、消しゴムを忘れたことなんて、一度もなかったのかもしれない。
「……ずるいな、田辺……」
私の小さな囁きに、田辺が耳を寄せる。
「なんか言った?」
「……何でもない」
いいよ。
私は、くす、と笑った。
しょうがないから、『隣の田辺くん作戦』に……大人しく引っかかってあげる。
顔を上げると、田辺が不思議そうな顔で私を見下ろしていた。
そっと目を閉じると、すこしの間があって……。
やがて、田辺の優しいキスが降りてきた。
最初のコメントを投稿しよう!