エピローグ

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 教室を出て行こうとした先生の足音が、ぴたりと止まる。 「そうだ。今日の下校放送、田辺の担当だっただろ」 「はい、そうですけど」 「椎名が代わりにやるっていうから、今日は免除ね。帰っていいよ」 「まじすか。……よっしゃっ」 「せっかく時間空いたんだから、ちゃんと勉強すること。いい?」 「はいっ、分かりましたっ」  ……この適当な返事。絶対に勉強なんかしないだろうな。  私があきれ顔で田辺の顔を見ていると、 「奈良崎も。…小悪魔キュートな仕草の前に、教科書を開いて勉強すること。いいね?」  春山先生がにっこり笑って言った。 「……」  ――私を敵に回すとひどい目に遭うって、……教えてあげないと分からないみたいねっ、センセィ。 「あの、せんせぇー」  私は精いっぱいのイジワルな口調で、 「次は鍵を閉め忘れないように、気をつけてくださいねー?」 「……」  歩きかけていた春山先生はこちらを振り返り、ふっと笑った。 「今日はちゃんと閉めるよ」 「……」  ……おういっ!!  今からするんかい、あんたらっ!!  ちょっとお!!想像しちゃうじゃんっ!!!  先生が出て行った後、私の頭にはあのラブシーンが目いっぱい大写しになって――。  ――ううっ…鼻血が吹き出しそう……っ。  竜王からのカウンターで大ダメージ!!やばい、HPがあっ…。  一人で悶えていると、パコ、と頭を叩かれて、私は我に返った。  田辺が後ろから私の顔を覗き込む。 「お前なんでそんな真っ赤っ赤になってんの。帰るぞ」  そう言って、さっさと教室を出て行こうとする。 「……ふぁいっ」  私はダメージを引きずりつつ、慌てて自分のカバンを取って、田辺の後を追った。
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