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"本日の午後、城へと参られたし"
「は…?今日の午後っ!?」
まさかのありえない指定日時に、思わず零れてしまった心の声。それにより前を歩いていたアルトゥールさんに不審な目で見られてしまったが、こっちはそんなこと気にしてられる心境じゃない。
「…騒々しいぞ。ユノ・クロフト」
「いや、ちょっと待てって!どう考えたって無理だろ!ここからウルカディアに行くのに、どんな早馬飛ばしても三日は掛かるじゃねーか!?」
そもそも、なんでコイツら徒歩なんだよ。馬のひとつにも乗らないで、どうウルカディアに行くって言うんだ。敬語もお構い無しに俺はアルトゥールに詰め寄る。
だが一方で、アルトゥールが急ぐ様子はまったく無く、ゆったりとした。だけどちゃんと訓練のされた歩き方をするソイツは、むしろ俺の言葉に疑問を抱いているように首を傾げた。
「お前が何に心配しているのかは知らないが、我等は三大都市と呼ばれたウルカディア王国の第一部隊だぞ。今回の任務に当たり、王が与えてくださった移動手段は馬じゃない」
「馬じゃないって…」
じゃあ、他にどうやってウルカディアまでの長い道のりを行くんだよ。そう訊ねれば、アルトゥールは深い溜め息をつき、足早に村のそばにある森へと入っていった。
「着いてこい。」
「(?森の中…?)」
一瞬。不思議に思って歩みを止めてしまったが、周囲に居た他の兵士達もアルトゥールと同様に、何の躊躇いもなく入っていく。
あぁ、くそ。ここまで来りゃ自棄だ。俺は荒々しく草木を踏み退けると、森に出来た獣道を歩き始めた。
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