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――――ここは、地図にも載らないとある小さな小さな村。
そこの外れに、俺達家族は平和に暮らしていた。
「おはようママ!リノ!パパ、今日も一日畑仕事頑張っちゃうぞー!」
「うふふ、パパは朝からお元気ねー」
「ハッハッハ!!人生楽しく生きていかなきゃな!リノちゃんも、学校楽しく頑張るんだぞ?」
「(……うぜェ)」
やかましい父と天然な母。加えて思春期真っ盛り中な妹。
俺以外の家族はいつもこんな感じの朝を迎える。
「おお、今日も旨そうなご飯だ!いっただきまーす!!」
そして、父が朝御飯に箸を付ける寸前の事だった。
――コンコンッ
「おや?」
ふと、こんな朝早くに木製の玄関の扉がノックされた。
「誰かしら…?はぁーい。」
パタパタと足音を鳴らして玄関へ向かう母。扉の覗き穴から外を見てみれば、そこにはある意外な人物が佇んでいた。
「まぁ!ねぇ見てパパ、兵士さんよ兵士さん!」
「え?」
「は?」
父と妹は、意外な来訪者に思わず動かしていた箸を止める。一方、確認した母は慌てて扉を開け、来訪してきた兵士を迎えた。
「朝早くに失礼する。私はウルカディア王国第一部隊隊長のアルトゥール・エルラーと申すものだ。」
「あらあらぁ、そんな遠くから御苦労様ですー。でも、一体うちに何の御用で?」
兵士…アルトゥールは、母の質問に表情を変えぬまま答える。
「ユノ・クロフトに用がある。」
「ユーちゃんに?」
首を傾げた母は後ろを振り向き、父と妹と目を合わすと瞬きを繰り返した。
だが、このままポカンとしていてもアルトゥールを苛立たせるだけである。一番に我に返った父は、未だ状況が呑み込めていない妹に声をかけた。
「…リノちゃん、ちょっとユーちゃんを呼んできてくれるかい?」
「はぁ…?何であたしが!?」
「パパはママのそばに居てあげたいからさ!ほら、分かったら行ってきておくれ!」
「リノちゃん、お願い」
父と母の二人に頼まれると、その空気に負けたのか妹は舌打ちをしながら父を睨んだ後。渋々二階に居る兄を呼びに向かった。
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