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――――俺はリビングに広がる光景を見た瞬間。思わずその場に立ち止まってしまった。
「……。」
寄り添いあう両親に、玄関に佇むガタイの良い青年。その後ろには数人の兵士が周囲を固めていた。妹の言葉が正しければ、この人達は俺の『お客様』だとか…。
何でだろ、どんなに頭をフル回転してもこの人達の事が思い出せない。理由は簡単。今この瞬間が初対面だからである。
「…お前がユノ・クロフトか?」
「!」
一番前に居たガタイの良い青年が、俺の存在に気付き声を掛けてきた。
俺はちょっとだけその人のオーラに圧倒されてしまったが、なんとか動かしにくい首を縦に振った。
「そうか…私はウルカディア王国第一部隊隊長のアルトゥール・エルラーだ。本日は君に用があって来た」
青年…アルトゥールさんは軽く自己紹介をすると、俺に近付いてくる。
そして、懐から何かを取り出し、それを俺に差し出してきた。
「…あの、これは?」
見れば、それは手紙だった。しかも赤い。え、何それなんて赤紙?とか言われそうだが、こんな片田舎でそんなものを見る機会は無い。俺はよく分からなくて、アルトゥールさんを見上げる。
アルトゥールさんは、そんな俺に表情を変えることなく、
「受け取れ。」
と一言だけ言った。
そう言われると俺の逃げ場は無くなってしまい、俺はその赤紙を渋々受け取るしかなかった。
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