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……ゴホン。悪い悪い取り乱した。とにかく。とにかくだ!アルトゥールさんが持ってきたこの赤紙の内容は俺にはまったく理解ができない。俺は愚妹とのやり取りを強制終了させ、黙ったままのアルトゥールさんに訊ねた。
「すみません。こんな遠い所に遙々来てくれたのは感謝しますが………まったく俺の脳では理解できないんですが。」
「詳しい内容はウルカディアで説明する。今、お前がすべきことは黙って荷造りをし、我々に同行することだ」
「(俺の反論は無視かよ…)」
さすがはお国の隊長様ってか。かなり納得は行かないが、このまま逆らえば何をされるか分かったもんじゃない。
つまり、俺が出来ることはアルトゥールさんの言われた通りにするってことだけだ。
「ユーちゃん…」
「母さん……」
俺が項垂れると、心配そうな面持ちの母と目があった。そんな視線を受け止められなくて、俺はまた顔を背けてしまう。
「母さん…俺、勇者になるんだって……」
元気付けようと言葉を紡げば、はは、と渇いた声が出た。どうやら思った以上に、俺はこの状況に参っているらしい。
「ユーちゃん…」
ごめんね母さん。俺、親不孝ばっかりな出来損ないの息子で。こんなんだけど、お国にお呼ばれしちゃった。みんなと離れ離れになるんだ。村の外は危険なモンスターでいっぱいだから出ちゃダメだよって、言ってたのに……。
一体こんな時、どんな顔すれば良いんだろう。でもこのまま逸らしておくことなんて出来ないから、俺は再び顔を上げ、母が今どんな表情をしているのか見た。
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