目は口ほどにものを言う

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「空也さん!下にワイヤーだっ!」  だが遅かった。彼女のスオイードに僕の言葉と動体視力が追いつかなかった。 プツンと弦が切れる音が複数回すると天井部分から無数の光が見えた。 それはヒュンと微かな音だけを鳴らし、矢となり空也さんを四方八方から突き刺し、彼女の動きを止めた。 それだけの数なのだ。 「魔女が魔法だけで戦う、なんてのはちょいと常識はずれだぜ。こういうトラップもあっての戦いさ…って無傷かよ」  彼女は、数十本は刺さったであろうがお構い無しに上体を起こす。 制服の所々が破けてはいるが、彼女自身からは血の一滴もでていない。 「とんでもない魔力…いや防いだのは制服……瀬矢が仕掛けたか!こいつはちとまずいかな…なんてな!」  オイゲンは動きの止まった彼女めがけてステッキを発砲。 ステッキは隠し銃のようだった。たて続けに6発の弾丸を浴びせる。 とても魔女の戦い方とは思えないが、おそらくこれが彼の戦闘スタイルなのだろう。 「弾丸に魔力を込めても無傷か…これは相当だな。さすが『呪い憑き』、これは大きな障害となる…」  連続した攻撃が全て不発に終わったせいか、オイゲンにも焦りが見える。 それもそのはず、怒れる獣となった彼女はいまにも襲いかかろうと唸りをあげている。 だが襲いかかると思えた彼女は、ブツブツと何かを唱えている。 その唱えている声は次第に大きくなり、離れている僕にも聞こえるようになる。 『砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ砕ケロ!』  彼女は一心に不気味に『砕けろ』と念じているようだった。 「まずいッ!おい!君も離れたほうがいいぜッ!人質が死んだら意味がないからな!」  オイゲンは僕を強く突き飛ばすと自身も後ろに2m、3mと跳躍して彼女から距離をとった。 あっけにとられていると倉庫内のあちこちからパキパキと音がし、やがてその音は岩が粉砕されるような音へと変わる。 倉庫自体には何の変化もないが、たしかに音は響くほどに聞こえる。 「呪詛…発した言葉を実現させる能力。その言葉は喉や発音器官から生じるものではなく、ただ呪詛として発せられる。ゆえに喉潰しても、耳をふさいでも意味がない…か。クソっ! こうなれば…!」
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