鶏口となるも牛後となるなかれ

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僕は薬品の臭いとガタガタガタとこぎみよく鳴らされるミシンの音で目を覚ました。 見たことのない天井だ。 保健室より高いし、壁紙も少し凝ったつくりの物みたいだ。 「痛ッ…うう起き上がれない…」  上半身を起こそうとすると腹部に痛みを感じた。 激痛というほどではないが、体の動きを相当に鈍くするほどの痛みだった。 腹部の他にも後頭部をさするとたんこぶがあるし、なんとか起き上がってみると両肩にも寝違えたような痛みがある。 半身を起こすことができたのでようやく今どこにいるのか、と確認することができる。 部屋の明かりは暗くデスク周りだけにライトがつけられている。 デスクには白衣の男、瀬矢先生がミシンで何やら縫っているところのようだ。 「おお、起きたかい。ミシンの音で気づかなかった。具合は?」  先生は手を止め、イスに座りながら振り向いて言った。 「具合も何も…体中がたがたです…あちこちが痛い…」  僕は、足をベッドから出そうとすると両太ももが筋肉痛と打撲が一度にくるような痛みを感じ、顔をひきつらせる。 「そうだろうねえ。手榴弾を至近距離で受けるとそうなるだろう。最も普通なら死んでいるけどね」 「…普通なら?そうだ!空也さんは!空也さんは、どこですか先生!」  もしかしたら空也さんが僕を庇って重傷、いやそれ以上のダメージを受けたのかもしれない。 「ん、聖かい?リビングでお茶でも飲んでるんじゃないかな?心配しなくても無事だよ」  リビング。そうか、部屋の雰囲気からしてもそうだが学校ではなさそう。 「ということは…先生の家ですか」 「そうだよ。僕と聖がここまで運んだ。あの後、君が負傷したみたいだと聖から連絡があってね」 「彼女は…怪我とかは?」 「いや至って健康だね。怪我もないし…まあもともと丈夫ではあるしね」 「丈夫って…彼女も僕と同じく至近距離で爆発に…」 「ああ、そうみたいだね。制服が少しほつれたり破けたりしたみたいだ」  たったそれだけ…?絶対に普通じゃない…。 「まあ、聖の制服は僕が手を加えてちょっとした魔力増強、魔抵抗増幅、頑丈さも戦車並み!とまではいかないくらいの物にしてあるんだよ」  いま初めてこの人が本当に魔女なのだと実感できた…。 そんなものあるはずがないと思うのが普通だが、実際に目の前で起きたことなのだ。信じるしか他ない。
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