1.白昼夢と自己顕示欲

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「颯太も来るかな。去年みたいに出くわすかもしれないね」 「ね、ねぇ。何とかなんない? アイツどうにかして会場に来ないように操作出来ないの?」 「はぁ?」  隣から服の袖をグイグイと引っ張られる。意味不明な頼み事と共に。 「操作ってどうやってさ?」 「だからメールか電話でどこか別の場所に誘導とか…」 「会場に来ないでくれって? 不自然すぎるよ」 「……それもそうか」  どこか別の場所に呼び出せば会場へ来ないようにする事は可能だ。しかし自分は行けないから待ちぼうけさせてしまうだけになる。  そもそも彼はそこまで嫌がらせされるほど悪い行いはしていない。会いたくないなら遭遇しないように祈るしかないだろう。 「人、多いなぁ…」  電車に乗って去年と同じ会場へとやって来る。1年前の記憶を辿るように並んで歩いた。 「じゃあ着替えて来るからここで待ってて」 「うい~」
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