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「綺麗だよ…」
ヴェール捲ると素直な感想を口にする。照れくさくなるような最上級の誉め言葉を。
端正な顔、ハッキリとした目や口。いつもの印象と違うその面立ち。今までに見てきたどの彼女よりも目の前にいる女性は素敵で美しかった。
しかしその表情の中には喜び以外の感情も存在。悲しさや憂いを含んだ涙が。
「ん…」
今日という日を迎えるまでに様々な困難にぶち当たってきた。友人や後輩との決裂、家庭内崩壊を。思い返せば逃げ出したくなるぐらいの辛い出来事ばかりだった。
けれど今は違う。ずっと待ち望んでいた幸せをようやく手にする事が出来たのだから。
「行こう」
「……うん」
彼女がいてくれればそれで良い。他には何も望まない。例えその報いに不幸を背負う事になろうとも。
ウェディンググローブ越しに手を握ると部屋の外へ出る。これまでの自分達と決別するように並んで歩き出した。
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