佐々木孝介

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孝介ー、チャリ乗っけてー! おい2ケツかよ、ずっりー! 孝介に迷惑かけんな! 3ケツとかできねー? できねーに決まってんだろ! あー腹すいたー! てか野球部延長なの?奏汰遅くね? え、孝介ヘルメット被ってんの?やば、俺も被んなきゃだめ? つーか2ケツとか部問題になんじゃね? チャリの鍵を開ける音は、いつも重い。 俺の気持ちが重いのと、荷物が重いせいもあるんだろう。 高校1年、9月。 台風が来て、空気が澄んで、冷たくなりはじめたこの頃。 早く冬が来ることを願いながら、いつもより60キロくらい重いであろうチャリを、笑いながら必死に漕ぐ。 早く冬が来れば、寒いから2ケツをしたがる奴もいなくなるんじゃないんだろうか。 冬が来れば、やっと1年が終わる。 嫌な先輩も、嫌なクラスメートも、全部変わる。 俺は、このままでいいんだろうか。 そんなことを考えるのも、日常茶飯事になってしまって、 俺は自分が何かということさえ考える羽目になっていた。 9月。 冬はまだ、遠い。
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