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「ねぇ、山田くん。好き」
あいつはいつも通りの怠そうな声で、眠そうな眼で、それでも俺の眼を真っ直ぐに見つめてそう言った。
▽
あれから日は経ち、あの告白は有耶無耶になったままである。
「考えさせてくれ」とは、よく言ったものだ。考える気など更々無いのに、その場を逃げる為のただの一時凌ぎにしか過ぎないのに…俺は、あいつから逃げていた。
あれ以来、あいつも何も言っては来ないし今まで通りの関係を続けている。
願わくば、このまま双方が忘れてしまう方が良いのだが…
「あ、山田くん。キスしない?」
実際問題そうはいかない。
「馬鹿か…んな事言ってる暇あったら手伝えよ」
俺は一応学級委員長だ。
皆が出した提出物を職員室まで運ばなければならない。
「ケーチ」
あいつは口を尖らせながら、でも俺が持っている提出物の山を半分以上持ってくれた。
▽
原崎鈴兎(はらさきりんと)。
俺の気の合う友人の一人。
と、思っていたのは俺だけで原崎の告白から察するに奴は俺を高校に入った頃から……好き…だそうだった。
裏切られた、とまでは感じないがそれでも言葉には出来ない不安はあった。
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