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「あ、ヤマダん~!」
「だぁれが『ヤマダん』だ。絞め殺すぞ?」
「山田くん。地味に怖いから」
職員室からの帰り、前方から歩いてきたのは俺の小学生からの幼馴染の島雅也(しままさや)と高校に入ってから仲良くなった加山慎平(かやましんへい)の二人だった。
「あれ?颯介とまた一緒にいるんだね。こんにちは、原崎くん」
雅也は爽やかな顔で原崎を見る。
雅也は小さい頃から身長が高く、今では180センチ超え、それに加えて温厚な性格と爽やかさを兼ね備えているものだから男女問わずの人気者だ。
そこは原崎といい勝負だろう。
「うん。こんにちは、島くん」
原崎が眠そうに(常にだが)応える。
「最近一緒にいるよね、ヤマダんと」
「慎、行くよ」
加山を半ば引きずるように連れて行ってしまった雅也の後ろ姿を見ながら原崎は
「島くんって、どこまで知ってるの?」
と。
い、いやいや。知るはずないだろう!あの告白は誰にも言ってないのに…、雅也味方ながら恐ろしい…。
▽
授業が終わり帰り支度をしていると
「そ~う~ちゃ~ん。帰ろ~」
背中に体重が掛かって前につんのめりそうになるのを抑えて声の人物、高浜真里(たかはままさと)を睨んだ。
「まりちゃん。重い」
「ちょっ!!まりちゃんって言わないでよ!」
「じゃあ、そうちゃんって呼ぶな」
「いいじゃん」
太陽みたいな笑顔を向けてくる真里に俺はふっと苦笑いした。
真里とは昔やっていたバスケの試合で知り合った友人だ。
今は訳あって俺はバスケをやめているが真里は昔と変わらずボールを追いかけている。
「俺より副委員長と帰れよ」
「春馬、今日用事なんだって」
「で、俺か」
「うん!!」
「残念だったな。俺はこれから図書館で勉強だ。来るか?」
答えは分かっているが悪戯気に聞いてみると真里は勢いよく首を振る。
「い、いいや。帰るし……って一人で勉強?」
「いや、原崎と」
「へ?原崎くんと」
珍しいと真里は驚いている。
「最近ずっと一緒にいるよね」
「あ、あぁ…まぁな…」
「まさか付き合ってんのぉ~?」
「ばっ!!んなわけねーだろ!!」
顔を真っ赤にして否定する俺。
何故俺がこんな必死に…
「わかってるよ。冗談、冗談」
「じゃあね」ともう人が少なくなり始めている教室を出て行った。
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