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幼稚園の頃は
修士がとても泣き虫だった。
それに比べて七海は喧嘩っ早く、お転婆だった。
そんな2人はいつも一緒で、修士が少し体の大きな子にいじめられると七海がいつも戦っていた。
すぐ泣く修士に比べて、七海は何があっても泣かなかった。
同い年や少し年上の子と喧嘩をしても、
転んで怪我をしても、絶対に泣かなかった。
いつも笑顔で「修ちゃん、七海の顔見て?」
傷だらけになりながらも満面の笑みを浮かべる七海に、修士はいつももらい笑いをしていた。
小学校の中学年の頃、七海が連続して学校を休んだ時期があった。
心配に思った修士が七海の家を訪ねると
扉から出てきたのは、怖いおじさんだった。
七海の父親だ。
「七海ちゃん・・・いますか?」
幼いながらも精一杯敬語を使った修士。
中を覗こうとすると、七海の父親が邪魔をしてきた。
「あ?てめぇ隣の家の餓鬼だよなぁ。ぎゃあぎゃあうるせぇんだよ」
「ぱぱっ・・・修、ちゃんは・・・何も、、、悪くないからっ」
後ろから七海の声が聞こえた。
ずいぶん苦しそうだった。
七海の父親が目を離したすきに、家の中を覗くと
廊下の先で、体中が真っ赤に腫れ上がった七海が這いつくばっているのが見えた。
「ななみっっ」
思わず名前を呼んでしまった。
七海の父親は七海のこんな姿を見られないように隠していた。
「帰れ、くそ餓鬼が。俺の愛しの愛しの七海がお前をかばっているうちにな」
そう言って、七海の方へ遠のいて行った。
扉が閉まる最後に見えたのは、誰か区別するのが大変なほど真っ赤に晴れた七海のいつもの笑顔だった。
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