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――ま、まぁ、当然や。月は舞香の友達なわけやし、陰陽寮の命無くとも器用に動いてるやろ。そして、碧は姉ちゃんなわけやし、こちらも動いてるだろう。それに、なんや他にも色々とおったような……あぁ、鬼一のおっさんとその弟子のチョー美人な子もおったけ? あいつらもやっぱどこかで戦ってるんやろな
何しろ、どいつもこいつも大人も子どもも、渦中に飛び込んで行ってしまったおかげで、海馬達は碌に情報収集も出来ないまま、戦場に辿りつき、“臨機応変に対応せよ”という便利な陰陽寮の命令書を基に戦うしかないのだ。
現陰陽寮の信用を失ってしまったが故、身から出た錆な事だとは思うが、海馬にしてみれば、誰かせめて自分位には連絡をくれよと思う。
「ともかく、儂は行くぞ」
「これが必要になりますかな?」楓雅が自身の青龍偃月刀を晴明に差し出す。が、晴明は首を振った。
「勾陣がおる。それで十分じゃ。のお?」と晴明は袖の中に向かって話しかける。反応は無かったが、晴明はその程度を気にする人間でもない。答えなど聞かず、踵で地面に円を描き、コンコンと叩いた。
「では、頼んだぞ」
次の瞬間、晴明の姿が掻き消えた。
まだ戦いは始まってもいないのに、海馬はどっとした疲労感に襲われ倒れそうになる。それに、彼は晴明の言った事を正確に把握していた。あのお茶らけた“生きた化石”は気まぐれでなおかつ、目の前の危機を遊園地のアトラクションのように楽しむというとんでもない悪趣味の持ち主でもある。そんな彼が子ども達の所に行って何をするのか。いや、しないのか。
「あいつ、雛達を助けるーとは言っておらんかったな……」
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