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「見つけたぜ、姉ちゃん」
碧の二頭の龍に導かれて辿りついた場所。舞香は笑顔で告げた。
一真はその横顔を見つめ、そして碧に向き直る。鍾乳洞のように窪んだ天上、奥には祭壇が、その周りを囲うように蝋燭が灯っている。そしてその祭壇の中心に立つ宝石のような輝きを放つ岩に碧の身体が埋まっていた。そして、その隣に立つ岩に目が留まり、思わず一真は叫んだ。
「佐保っ!?」
「心配するな。死んじゃいない」
天がすかさず、皆にも聞こえるように言った。舞香の笑顔は一瞬にして崩れた。が、天の声は彼女にも聞こえている。すぐに気を引き締めて、動揺をしまいこむ。
「……今、助けるから」
碧は答えなかった。これは一真の推測に過ぎないが、答えないのではなく、答えられないのだろう。どんな顔をして、舞香と向き合えばいいのかが、分からないのに違いない。
――その気持ちは分からなくもないけどさ
一真だって、妹がいる。その妹と喧嘩した時なんかは、どう仲直りしたらいいのかで悩んだ事も多かった。けれども。
「碧」促すように、声を掛けると、碧は表情を引き締めた。
「舞香、私は」
一歩踏み出した舞香が立ち止まる。今にも崩れてしまいそうな程に脆い。姉妹の微妙な距離感。が、どちらがか歩み寄るよりも先に、二人の間の空気が揺らいだ。電波の悪いテレビにラグが走るかのように、不鮮明な映像。
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